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† † †
一方、灰村諷音が帰ったあとの自分の部屋に残された早乙女聖は、一人でウロウロと歩き回っていた。
不機嫌、と言えない事もないが、どちらかと言えば心配そうな表情をしている。
「ほんっっっとに信じらんないわ! 私が覚えてたっていうのに、なーんでアイツは私を覚えてないの!? そんなに私は印象に残りませんか!? あー、そーですかっ!!」
心配そうな表情を見せながら憤慨するという荒業を見せてくれた聖は、少しでも苛立ちを抑える為に棚から棒つきキャンディを取り出し、口の中に放り込む。
ストロベリーの甘さが口の中に広がり、少しイライラが抑えられたような気がしない事もない。
何であれ、少しは『落ち着いた自分』を取り戻せた聖は、過去の出来事を思い起こす。
「まあ、会ったのはアイツが転校する三日前……、そう『アレ』が起こった次の日だったわね。今なら、何があって死んだはずのアイツが生きてるのか嫌なくらい理解できるし、なんで黙って消えたのかも解ってるつもりだけど……」
まあ会ったって言っても曖昧な出会いだったけど……、と両開きの窓を外側に押し開け、聖は夜空を見上げて呟いた。
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