魔術師としての日常

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「やっほー、聖。こーんな夜更けにどーしたんだい?」  開けた窓の下から透き通った力強い声に話し掛けられた。  五階にある自室から、真下の方に視線を移す。  そこにあったのは、マンションを照らす光に当てられ、活発そうな顔立ちに似合った短くさっぱりとした黒髪の少女。  その少女が健康的な笑顔で元気よく手を振っていた。 「お疲れさまです、真雪先輩」  彼女――有坂真雪(ありさかまゆき)――は、聖の一つ上の先輩に当たる人物であり、同時に町の治安を武力行使で守らせる『ジャスティス』の中で、良識ある取り締まりをしてくれる一人である。  ジャスティスとしての仕事があるからこそ、門限を過ぎても出歩く事を許された数少ない人だ。 「随分と黄昏てるみたいだけど、やーっと聖女サンも恋を知るお年頃にでもなったのかい?」  イッシッシッ、と女性としてどうよ? と訊ねてみたくなるような笑い声を上げる真雪に、聖は苦笑いで言葉を返す。 「まっさか。私は今のところ恋愛に興味はありませんよ!」 「とかなんとか言いながら顔が赤くなってるわよ?」
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