灰村諷音の非日常

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 昇降口の正面にある階段を三階まで上り、通い馴れた『二ーA』の教室に入る。  授業が始まるまで一時間半以上もある為、当然のように教室には灰村しかいない。  何らかの用事があって早く来ていたとしても、灰村は話し掛けないし、話し掛けられもしない為、大した違いがあるワケでもないのだが。 「取り敢えず、寝よう」  睡眠不足のせいでフラフラと揺れる頭で自分の席へ座り、すぐに机に突っ伏し腕を枕代わりにして寝息を立て始める。  ふと「そういえば昨日の夜からご飯食べてないな……」という考えが頭を過(よ)ぎったが、今は眠気の方が勝っており、空腹はさして気にもならなかった。      † † † 「ん……、あれ?」  変な体勢で眠っていた為、身体を走る鈍い痛みで目を覚ました灰村の視界に映ったのは、教室に入った時と同じ光景。  つまり、教室に自分以外は誰もいないのである。  ただ、身体の軋みを考えると短時間寝ていたというワケでもない。それに色々と変わっている部分もある。  七時過ぎを差していた時計が今は四時過ぎを差していたり、窓から射し込む光が朝日から夕日に変わっていたりする。 「あれー? 一回も起こされなかったのかな?」
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