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それは灰村にとって有り得ない日常だった。
灰村にやる気が全くない事を知っている教師は起こしたりしない。生徒の自主性に任せる放任主義であり、そこに違和感はない。
それでも、灰村が一日を静かに終えるなど珍しい事だった。
「箕島たちがイジメに来ないなんて……、風邪で休んでるのかな? いやいやいや、バカは風邪なんて引かないし」
かなり失礼な事を口にする灰村。彼は気絶していた為、知らないのだ。
箕島竜也たちは早乙女聖一人にやられ、とても登校できるような状態でない事を。
そんな事は露ほども知らない灰村は「ま、どうでもいっか」程度の考えで鞄を掴むと、欠伸を噛み殺して教室から出て行く。
昇降口を目指して廊下を歩いていると、流石に空腹感が込み上げてきたのか、灰村のお腹がキュルル……、と鳴く。
(ほぼ丸一日絶食状態だもんね……、流石にツラいや)
お腹を押さえながら「自炊も面倒だし、お弁当か何か買って帰ろうかな」と計画して昇降口を出て、校門へ向かって歩く。
そして、ここから本格的に灰村諷音の非日常が始まる。
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