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……ん? と早めに気付けたのは偶然だった。
校門のところ、白い壁に寄りかかるようにして、ぽつんと暇そうにしている人影を見つけたのだ。
「あれは……、聖女サン?」
遠目からでも分かるくらいに腕時計とにらめっこをしては空を眺め、口にくわえたキャンディの棒を上下に振っている。
そして空を眺めていたかと思えば、寒そうに自分の身体を抱きしめる。
「誰かと待ち合わせでもしてるのかな?」
そう呟いてから暫く逡巡する。
昨日、手当てしてもらったお礼を言うべきか否かを考えているのだ。
だが、名前も知らなければ好んで関わりたいとも思わない灰村は、そのまま素通りすべく軽く頭を下げると、少しだけ早足で聖の前を通り過ぎる。
瞬間、ガシッと肩を掴まれた。
「あ、灰村くん。奇遇ね」
軽い笑み。
だが、こめかみには明らかに怒っている事を示す青筋が湛えられている。
「そ、そう? き、奇遇……、なのかな?」
「き ぐ う よね?」
奇遇って事にしておいた方がよさそうだ……、と判断した灰村は「ソウダネ」と引き攣った笑みを返すしかなかった。
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