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確かに早乙女聖という少女は、かなり可愛い部類に入る。
告白も三日に一度ほどのペースで行われており、彼女の中では一つの学校行事に近くなっている。
普通の学生として生きていれば、灰村も彼女に惹かれて行事に参加していたかもしれない。
あくまでも『普通の学生として生きていれば』の話だが。
「灰村くーん。私、お腹空いたー」
彼氏に甘えるような声で言う聖の言葉には、一瞬にして男をとろけさせる魔性が多分に含まれていた。
思わずブランドもののバックを貢ぎそうになってしまうような、そんな甘い小悪魔の誘惑だ。
「……はっ!」
脳内で聖にプレゼントをしたところで自分を取り戻した灰村は、頭を振って妄想を振り払う。
「い、いや、今日はちょっと疲れてるからまたの機会に――」
「私とじゃ、いや?」
悲しげな表情に上目遣い。それプラス、手を聖女サンの柔らかな手で包まれる幸せ――、
「お供させて頂きます」
速攻で完敗だった。
理性を守る為には、こうする他なかったのだ。
ただの言い訳だが。
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