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灰村の返事を聞いた聖女サンは、くるっと踵を返すと、待ちきれないとでも言うようにつかつかと歩いていく。
ただ、手だけは握られたままの為、彼のウブな心臓はドッキドキだ。
手を繋いだまま入った甘味処。
正面の席に聖女サン(今更だが灰村は聖の名前を知らない)が至福の表情を浮かべて幸せを文字通り噛みしめている。
そして灰村と聖の座るテーブルの上に所狭しと並べられているクリームぜんざい、あんみつ、白玉パフェといった数々の甘味。
「灰村くんは食べないの?」
まるで「今気付いたんだけど」と前置きするように訊いてくる聖女サン。
灰村も空腹の絶頂期にいるのだ。食べたくないはずがない。
しかし、今のお財布事情を考えると、頼むに頼めないのである。
だから、皮肉を込めて言った。
「太るよ?」
「心配しなくても大丈夫よ。私、太らない体質だから」
本当に心配なのはアナタの未来の体型ではなく僕のお財布です。 という言葉は何とか飲み込む。
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