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「いやー、なんか悪いわね。無理矢理驕らせたみたいになっちゃって」
悪いと思うなら返品してください。 と言いかけた口を閉ざして苦笑いを返す。
だが、聖女サンの顔を見れば解る。彼女は全く悪いと思っていないと。
そして、怨念を十分に乗せた視線を向けていると、
「ん? 何よ? 何かついてる?」
「うん。口の回りに生クリームがべっとりと」
うぇっ!? と奇声を上げておしぼりで口を拭う聖女サン。
その赤く染めた顔が可愛くて、なにか色々なものに負けたような気分にさせられた。
† † †
一足早く財布の中に真冬が到来してしまった秋空の下、とてとてと薄暗い紅葉並木を歩く。
静寂に包まれた紅葉並木は、どことなく寂しげな印象を記憶に押し付けてくる。
だが、今の灰村に紅葉風景を気にかけている余裕は微塵もない。
「あの……、聖女サンの家はコッチじゃなかったとおもうのですが?」
「それ止めてくんない?」
はい全く話が噛み合ってませんね。 という苦情はグシャグシャポイして、彼女に「それって……、何?」と真意を訊ねる。
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