自販機を破壊する聖女

5/11
2652人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
 その目は、助けを求めているようにも見える。  その目は、恨み辛みを向けているようにも見える。  そんな彼らに灰村諷音は、いつも同じ表情を見せる。  それは、後悔と懺悔。  だが、ここに来る度に彼は痛感する。 「僕は君たちに何をしてあげられる? 後悔してほしい? 苦しみ抜いて死んでほしい? 分からないんだ。 キミたちが何を望んでいたのか、何を残したかったのか、何を想って殺されていったのか――。加害者である僕には何一つとして解らないんだよ……」  灰村は、いつも思っていた。  僕に何がしてあげられる? 一緒に死んであげればよかったのかな? そうする事で皆の救いになるのかな? 「誰か教えてよ……。彼らの魂が満足できる僕の死に方を――」  そう灰色の空に呟いた灰村諷音の表情は、儚く消えゆく運命(さだめ)を負った雪のように、悲しげなものだった。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!