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その目は、助けを求めているようにも見える。
その目は、恨み辛みを向けているようにも見える。
そんな彼らに灰村諷音は、いつも同じ表情を見せる。
それは、後悔と懺悔。
だが、ここに来る度に彼は痛感する。
「僕は君たちに何をしてあげられる? 後悔してほしい? 苦しみ抜いて死んでほしい? 分からないんだ。
キミたちが何を望んでいたのか、何を残したかったのか、何を想って殺されていったのか――。加害者である僕には何一つとして解らないんだよ……」
灰村は、いつも思っていた。
僕に何がしてあげられる? 一緒に死んであげればよかったのかな? そうする事で皆の救いになるのかな?
「誰か教えてよ……。彼らの魂が満足できる僕の死に方を――」
そう灰色の空に呟いた灰村諷音の表情は、儚く消えゆく運命(さだめ)を負った雪のように、悲しげなものだった。
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