自販機を破壊する聖女

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 怒髪天と言いたげな聖女様の耳に、複数の少年たちの笑い声が届く。  イライラとしている時に聞いたからか、生理的に受け付けない声音だったのかは定かではないが、確かな事が一つだけある。  不快感がMAXに達したという事だ。 「うっさいわね! どこのガキがギャーツク騒いでやがんのよ!!」  力任せに癪に障る笑い声の聞こえてくる方の窓を開けると、その真下に六人の男子たちに殴る蹴るの暴行を受けている線の細い少年がいた。 「………………え?」  僅かに驚いたような声を出てしまった口を手で押さえ、肩を震わせながら、早乙女聖は一歩後退する。  普通なら『リンチ』というものを見て、驚いたり恐怖してしまう場面だろうが、残念な事に早乙女聖という少女は普通ではない。 「……ぶはっ、あはははは!! あ、有り得ない……、い、今時イジメとか、ふふっ、ど、どんだけガキなのよ!!」  あははっ!! と決して乙女とは言えないバカ笑いをして少年たちとイジメられている少年を見て、目尻に溜まった笑い涙を人差し指で拭う。  そして、ニヤリと見た者に恐怖という名のトラウマを植え付けるような私利私欲にまみれた黒い笑みを浮かべ、早乙女聖は人気(ひとけ)のない廊下を駆け出した。
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