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役の行者は偏屈であらせられる。
普段も何がしか考えていらっしゃるか、呪文を唱えていらっしゃるか。にこりともしない。
前鬼と後鬼は、そんな時、困り果ててしまうのである。何がしか用を言いつけられるまで、じっと、待機しているのだ。
ある時、弟の行者が、役の行者に尋ねた。
「小角兄上。少しは、世の中で起きている、面白き事に耳を傾けるとか、したらどうなんです?」
「全て、ここから見えておる。」
「兄上。見ているだけでは、何も始まりません。どれ、私と、出掛けてみましょう。」
弟行者は、無理矢理 兄を連れ出した。
ちょうど里では、宵宮の祭り。人々が賑わっていた。あれこれと見て歩くのだが、相変わらず、小角行者は、にこりともしない。
パンッ!と音がして、小角は 印を構えて飛びすさった。子供が手をたたいて喜んだ。豆鉄砲であった。
「兄上、楽しかろう?」
役の行者は にっこり笑った。
とっつぱれ
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