第三章

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〈アメリside〉 「ほらよ」 「ありがとう…」 「……なんで黙ってたんだよ?」 ルーが不服そうに言う。 お兄ちゃんたちと別れてすぐ、ルーは私を救急医務室に連れてきた。 巻かれた包帯が妙に痛々しい。 ……大したことないのに。 「なんでって……大したことないし。お兄ちゃんには心配かけたくないの」 「へぇー、立派な妹だこと」 「……。ルーもそんなに心配してくれなくていいよ。自分のことくらい自分で……いたっ!」 「自分で……、なんだって?」 ルーが私の右手をぎゅっと掴む。 けれど実害のある痛みより、ルーの貫くような視線の方が痛かった。 唇を噛んで堪える。 視線を反らしたら負け。 「……離して」 「やだね」 「ルーっ!!」 「……お前さ、なんだってそんなに遠慮すんの?兄妹なんだろ?」 「……っ、兄妹…だからよ。お兄ちゃんだからこそ……嫌われたくない。いい妹でいたいのっ…」 .
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