125人が本棚に入れています
本棚に追加
平成21年4月8日
銀魂学園。
「おい坂田、高杉は?」
高等部3年、生徒会長の土方が万事屋部の部長である銀時に声をかけた。
銀時は銀色の癖のある髪を風に靡かせながら校舎3階の図書室に視線を向けた。
「あそこだよ。」
呆れたように笑う銀時に土方は少しだけ顔を曇らせ「そうか」とだけ呟いた。
土方も銀時も少しだけ切なそうな表情をする。
彼らの脳裏には漆黒の髪の少女が過ぎる。
いつもいつも何を考えているのか分からない無表情な瞳で笑みを浮かべる彼女は高杉という少年に良く似ていた。
高杉も彼女も愛し合っていた。
本人達が気付かなかった時から銀時や土方は知っていた。
想い合い傷つけ合う2人をずっと見てきたのだ。
「高杉は・・・・もう学校には来ないと思ってた」
土方の呟きに銀時は微かに笑う
「図書室にアイツの姿がなくても高杉は行くよ。」
銀時はそう言って図書室の窓から見える男の姿を見つめていた。
「アイツが帰ってくるまで、高杉は行くぜ?卒業してもずっとな」
男の姿を見つめながら銀時は続ける。
「俺は言ったんだよ?イギリスに今すぐ行けって。でも奴は馬鹿だからな。行かないってさ」
「ハッお前に馬鹿にされたら終わりだな」
「おっ?言うねぇ?マヨ会長の分際で」
「あぁ?」
いつの間にか喧嘩になっている2人を高杉は図書室から眺めていた。
銀時の視線に気付いてからずっと。
「馬鹿な野郎だ。」
呟いて目を閉じた。
いつもなら・・・
4ヶ月前ならここで声が聞こえた
【そうね。】
自分の言葉に相槌を打つ少女の声が。
でも今は静まり返っている。
誰も居ない図書室の窓際の席で彼女はいつも本を読んでいた。
その姿が見たくて図書室に行くがもう彼女を見ることは無い。
愚かだと自嘲して高杉は図書室を出た。
最初のコメントを投稿しよう!