プロローグ

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「高杉さん・・・どうして泣いているんですか?」 新八の言葉に高杉は潔く気付いた。 いつの間にか頬を伝い、冷たい雫が屋上のコンクリートに染みを作っていた。 「・・・・おい眼鏡。この事は誰にも言うんじゃねぇぞ?」 高杉は新八の目を見てそう言う。 「特に、お前の尊敬する甘党馬鹿に知られたら後々うぜぇからよ」 そして、高杉はそのままコンクリートで出来た地面に寝そべり瞳を閉じた。 「はい。後、雪音さんが放課後に話があると言ってました。」 新八はそれだけえを伝えて、静かに屋上を後にした。 空は快晴。 鳥は嬉しそうに大空へ舞う。 心は梅雨。 風が心臓を冷たく切り裂く。 今日の青空は心とはまるで正反対で・・・ 高杉は閉じた瞳を開けることをしない。 否、出来なかった。 『晋助・・・・』 懐かしい声がずっと高杉の脳内から離れない。 絶えられない絶望の中で生きて来たのは彼女が居たから。 いつも隣で、無表情なけれども優しい・・・ そんな笑顔を浮かべて隣に居た。 そんな自分の全てでもあった彼女を気付かぬまま、高杉は失ったのだ。 「・・・何で帰って来ねぇ?」 静かな屋上で呟く言葉。 それは搾り出すように吐いた言葉。 「お前さんは最初から俺を利用しただけか?」 切なく痛い言葉。 引き裂かれた人形のような哀れさ。 「なら・・・・何故あんな顔で笑った?」 もう会うことも無いだろう彼女に向けた本音。 「俺ぁ・・・あの日から・・・お前を・・・・」 高杉は涙を流したまま言葉を空へと零した。 「愛してんだよ・・・・」
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