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ある日の午後のことです。
彼はたくさんの本を手に乗せ歩いていました。
「……っと」
今にも落としそうな程です。この本達はすべて押しつけられたもの。彼はとても優しい人なので、任せられたら断ることができないのです。
彼が歩く度にあちこちから静かな笑いがこぼれます。
彼はいい人すぎるのです。
「おい、カシム、これも頼むよ」
「え、あっ……!」
突然現れ、積み上げられた本の上にまた重いものを積まれ、バランスを崩し本が床に落ちてしまいました。
「なにやってんだよ、カシム~。それ大事な本なんだぞ?」
本を必死に手繰り寄せる彼の手を踏み付け嘲笑とともにそう言って彼の髪を掴み上げたのです。
「…っ」
「どうしてくれんだよ」
「ご、ごめんなさい…」
痛みに耐えながらそう発すると満足気に離して立ち去っていきました。それを見送るとまた一息、ため息をつきました。
(…はぁ…。どうしてこんなに僕は情けないんだろう)
いつも彼はそう思っていました。頼まれてばかりでそれを断れない自分に苛立ってばかり。いやなことでも耐えてばかりいたのです。自分はまだ大丈夫、これが済んだら自由だ、と。
彼には友達と呼ばれるものはいませんでした。頼りになるのは自分の知識と本だけ。今まで地味に生きてきた彼にとっては、友達を作ろうにも一苦労です。
今や、彼は学園の笑い者なのです。
「カシム…またやってるよ…」
「あいつ頭おかしいんじゃね?」
「また転んだわ…。男としてどうなの?」
「気持ち悪いわねー。何考えてるのかしら」
そんな言葉を毎日、浴びさせられる彼はひとりぼっちでした。
「…誰も…いないよな」
こそこそとやってきたのは屋上、でした。
彼は屋上にきてはいつもストレスを発散してきました。何もすることもなく、ただボーっとするだけ。
それでも彼にとっては憩いの場所でした。
死のうと思ったことは一度もありませんでした。死んでも誰も悲しまないなんて悲しすぎるからと。
(どうせなら)
最後は二人がいい。
彼は確かに独りでした。
けれど眠った時は確かに二人、だったのです。
彼はこのあとにある人物に出会うのですが、
それはまた
別の話………
NEXT.....?
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