「時計」

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今、一体何日の何時なのだろうか。 所々ひび割れたコンクリートの冷たい壁に四方を囲まれ、ぼんやりと灯った薄黄色い蛍光灯の下で私は生活している。 この密室には時計が何個もある。置き時計、目覚まし時計、壁掛け時計、腕時計……。しかし指している時刻は全てバラバラ。おまけにテレビやカレンダー、携帯電話、光の入る窓など、凡そ日時を知るのに必要な物は何も無かった。 時間が分からないのに針の音だけが雑踏のように鳴り響いているのが嫌になって、前回寝る前に、大量にあった時計は全て壊してしまった。 そうなると、いよいよ時間というものが分からなくなってきた。 1秒って、1分って、1時間って、1日って、1年ってどのくらいだったかな? この部屋に入れられてからどれだけの時間が経ったのだろう? 数十年も経ってしまったかもしれないし、或いは数分かもしれない。 いつになったら死ぬのだろう? 今すぐにでも死ぬかもしれないし、或いはずっと生き続けるかもしれない。 しかし考えるのも時間の無駄だ。 私は、部屋の隅の、空っぽの砂時計をひっくり返した。 砂ではない、何か別なものが落ちた気がした。
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