1、最後の日

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    「地球滅亡の話なんだけど」 「それはまた…壮大な話だね」 「読むとそんな事ないんだよ。けいも今度読んでみる?」 「そうだね。ちょっと読んでみたいな」 「じゃあ、内容はこれ以上喋らない」 きっと本を読む者なら必ず恐れる事をゆずはしっかり解っているようで、それなりに厚みのある文庫本を僕の前にそっと置いた。カバーがかかっていて誰が書いた物かもタイトルも解らない。 それでも、ゆずが好きな物は不思議と僕も好きになることが多かった。だから、タイトルや著者が解らない事は大した問題ではないのだ。 「あのね、もし地球に彗星が衝突したりして後三年で人類滅亡、何てことになったら、けいならどうする?」 「三年かー」 「そう、三年」 三本の指を立てて、比較的真剣な眼差しをこちらに向けるゆずに、そうだなぁと考えるフリをして机を見た。 薄いクリーム色の机の上には作りかけの楽譜が散らばっている。歌詞はゆずが書いた、ラブソング。この歌詞ならバラードがきっとぴったりだ。次の音は何にしようかと、お気に入りの少し汚れたシャーペンを握った。握りやすくてもうずっと僕の相棒になってもらっている。 「…けい?」 「今回の歌詞、凄い好き。恋の歌だ」 「どーも」 そっけなく言うゆずに視線を戻した。話を反らされたと拗ねているんだろう。 
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