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「消せないかな、それ」
「どういうことだ?」
急に関係のないようなことを言い出す悟に、静華は努めて冷静に対処する。
「だから……人の目に見えないように、っていうか、必要な時だけ出せるようにするとかさ」
細身の刀身とはいえ、この不安定なご時世に刀を持って歩いているのは、かなり悪目立ちしていることは否めない。しかもそれを持っているのが可愛らしい女の子なのだから、尚更なわけで。
悟の言いたいことはわかるが、そっと草薙に手を触れさせて、首を横に振る。
「神子かサニワならばできようが……私は闘う者。剣を消すことはできない」
いつでもどこでも、闘えるようあること。
それが、自分の役割だ。
「サニワ?」
聞きなれない単語を耳にして、双牙が寄りかかっていた大岩から体を起こす。とっくに寝ているのかと思っていたが、ちゃんと起きて聞いていたらしい。
「神審者。神子に降りる神が善か悪かを見極めるもの」
サニワは、神子が神降ろしをするときには、必ず傍に控えている。サニワがいないと、神子の身に邪神が降りてもそれを制する者がいないことになり、大惨事を起こしかねないからだ。故にサニワというのは、自らの対となる神子と同等か、それ以上の神力を備えている場合が多い。
「神子さんのほうは?」
「神子は神を降ろし、邪を滅する者。その逆も然り。世の命運を左右する力を身に宿すのが、神子だ」
神子の力は本人の神力だけではなく、どれだけ強大な神をその身に降ろせるかにかかってくる。無論、本人に力がなければ神を降ろすことも、その力を使うこともできないが、何よりも求められるのは、神を降ろすための器の広さだ。
興味なさげに目を逸らしている双牙が、再び岩に背を戻す。その仕草に違和感を感じた悟が思わず目で追うと、視線に気づいた双牙が。
「何だよ?」
「え、あ……あ?」
挙動不審になる悟に、にやりと人の悪い笑みを浮かべて。
「俺に見とれてたのか?」
「---そ、双牙!」
けらけらと笑う相手に対して、真っ赤になって抗議する。彼の顔色が少し良くないように見えるのは、勘違いではないだろう。おそらく先ほど襲われた時の傷が疼くのだろうと思われる。奏華の式神のおかげで血は止まっていたが、流れ出た血が体内に戻るわけではないのだから。だが、それを言ったところで双牙が大人しく認めるとは思えない。
二人に気づかれないよう、小さくため息をつく。
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