二章

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 だが、男はそれこそ面白そうに喉を鳴らし、影に隠れてその姿さえ見せない少女に手を伸ばした。 「私が怖いか」  若々しい手から感じられる力強さと、低く落ち着きのある声が相まって、ぞくりとするほどの冷淡さが背を駆け抜ける。  動きたいとは思っても、体が硬直してしまって動けない。  恐怖、とも違う。  圧倒的な、威圧感。  指が白くなるほど握り締めた手をそのままに、せめて崩れ落ちるようなことにならないよう、必死で自分を鼓舞している彼女に、男は変わらぬ微笑をのせたまま、伸ばした手を引き戻した。 「勾玉を、私のもとへ」 「---承知」  氷の呪縛から解き放たれた少女が、低い返事を残して髪を翻す。  再び一人になった青年は、薄闇のなかでゆっくりと目を閉じた。
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