二章

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「ほら、『見え』ません? 光ってますでしょう」 「あん? ああ、あれか。ってかあれ、埋まってね?」 「掘り出してくださいな。なんのための男手だと思ってますの?」 「おまえなぁ」  双牙とともに視線を傾けてみるが、特に変わったところは見つからないし、勿論どこも光ってなどいない。二人に見えているモノが見えないということなどわかりきっていたことだが、なんだか自分が情けなくなってしまう。  できることとできないことがあるのだと、割り切ってしまえたら楽なのに。役立たずでしかない現状が、悔しい。 「っち、しゃあねえなぁ。おい、悟。さっさと済ますぞ」 「あ、うん。わか……」  返事をしてそちらへ向かおうと動いた瞬間、突然、体中の血が逆流するような感覚に襲われて、声が出せなくなる。しかしそれも束の間。すぐに奏華の札が効力を発揮し、吐き気がするほどの寒気は治まった。ほっとして体の力を抜くと、青ざめた双牙と札を取り出す奏華の横顔を見ることができた。 「貴方、本当に感受が強いんですのね。護身呪を身に着けていますのに」  脂汗を流す双牙を見上げて、独り言のように奏華が言う。双牙は小さく舌打ちするが、会話から取り残されてしまった悟には、苦しそうな横顔を見守るしかなかった。  やがて、悟にもはっきりとわかるほどの異臭が漂ってきた。反射的に鼻と口を手で覆い、それでも鼻をつく臭いは薄れることなく悟の嗅覚を刺激してくる。 「邪気と死臭ですわ。結界をはります。わたくしの傍から離れないでくださいましね」  立っているのが辛くなったらしい双牙が、片膝をつく形で座り込む。その顔色を見ながら悟も屈みこむと、三人を囲むドーム型の光の壁が出現した。 「品物比礼、蜂比礼」  主の呼び出しに応じて二枚の布が現れ、それは瞬時に男女の姿へと変化した。女は前にお世話になった蜂比礼、男は品物比礼の化身であり、奏華が操る式神である。  
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