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ゆらゆらと頼りない青白い光に向かって、少女は不敵な笑みを浮かべていた。
光の玉には、彼女が何をするつもりなのかがわかっているのだろう、不安定な軌跡を残して逃げようと試みるが、少女の手が刀印を結ぶと、動けなくなってしまった。
「八握剣」
主の声に呼応して姿を現したのは、無骨にして豪奢な一振りの剣。しかしそれはすぐに形を変え、人間によく似た形をとり、主の命によって光玉を自らの内へと取り込んでしまった。
「戻れ」
少女、というには少しハスキーな声が小さな唇から流れると、剣は姿を消す。彼女は腰まである長い黒髪を軽やかに翻し、柔らかな陽の光の中へと、姿を消していった。
長い髪を首の後ろで緩く括って、まぶしいほどの部屋へ、静かに歩を進める。広いマンションのベッドに横たわるのは、儚げな印象の少女だった。
彼女は少女の眠るベッドの傍まで近寄ると、苦しそうに眉を潜める少女の青白い頬に、そっと指を触れさせた。冷たい指先に感覚を戻されたのか、長い睫毛を震わせ、よく見知った顔を認めてほっと表情を和らげた。
「美有…帰っていたの……」
容姿から推測される年齢は十七、八のようだが、受ける印象はもっと幼い。しかし、その細い肢体からあふれ出す空気は、普通の人間よりのものよりも、よほど清らかだ。少女が指先ひとつ動かすだけで、澱んだ空気が静謐なものへと変化していく。
美有、と呼ばれた彼女は起き上がろうとする少女を手伝い、その小さな背中を支える。どこか青ざめた表情は、意識せずとも庇護欲をそそるものだ。
「また、怖い夢を見ていたのですか?」
優しい声に弱弱しく首をふり、そっと美有に抱きついた。細い腕で、でも離さぬようにしっかりと。
「どうなさいました?」
ふわりと掠めるようなささやきを胸に残して、可憐な少女は細身の体をゆっくりと離す。
「いいえ、何でもないの……」
言えない、想い。
わかっている。
美有が忙しいのは、自分のせいなのだと。わかっているけど、寂しくて。一人でこの広い部屋にいることが、時々とても、悲しくて。
ふと、異様な匂いが鼻をついて、反射的に美有を見上げる。美有は微笑を崩さず、柔らかな少女の黒髪を手で梳いていた。かちあった瞳は、信じられないほど優しい。
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