夏は出会いの季節

2/13
前へ
/303ページ
次へ
  中学三年生の二月、俺は記念受験という気持ちで彗星高校という高校を友達と一緒に受験した。 彗星高校とは私立高校であり、彗星大学という私立大学と合わせて、通称“彗星学園”と呼ばれる高大一貫校である。 そして、この学園は色々な所が変わっている。 例えば私立なのに公立ぐらいの料金で行けるなどの費用の安さだ。 なんでも経営者である歴代の理事長家系が教育熱心だかららしい。 しかし、一番変わっているのはその受験方法だ。 彗星学園の受験方法は通常の五教科筆記試験の他にも自己申告で体育試験、料理試験、裁縫試験、書類試験など色々な試験が受けられる。 ……分かりにくいから書類試験の内容だけを説明すると、要するに人間関係だとか、自分が過去に(または現在進行形で)どんな功績を残したかを学校に提出するものだ。 代表的な事例で言えば、俺の一学年上の先輩が様々な店のオーナーをしていることで合格をもらったと聞いたことがある。 まあ、それも嘘なのか真実なのかは定かではないのだけど。 しかし、俺達がこの学園を受験したのは合格したい訳ではなく、先程言った通りあくまで受けたかったから、つまり記念受験のためだ。 何故かと問われれば返答に困るが、記念受験などどうせそんなものだろう。 それに彗星高校を受験する人の中には本命よりも記念受験の生徒が多いから、別に気にすることはないしな。 ちなみに合格の基準は誰にも分からないが、『その年の理事長と校長が独自で才能や特異性があるかないかを判断する』というのが一番有力な噂として広まっている。 もちろん、俺にも友達にも飛び抜けた才能なんてものはなく、必須の五教科筆記試験と自己申告で体育試験を受けて受験は終わった。 余談だが、その二つを受けるのが受験者の中で一番多い選択らしい。 そして三月、なんの間違いか合格通知がある朝、俺の家のポストに入っていた。 いや、一応は何故俺が彗星高校に合格したのかということについて心当たりがある。 何故なら俺にはある特異性があったからだ。 その特異性とは俺が何事にも凡才なことだ。 うーん、なんか自分で言っておきながらあまりピンとこないな……。 それでは言い直そう、俺は何事にも平均的な記録を出してしまうのだ。
/303ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1218人が本棚に入れています
本棚に追加