バカップルの日常

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薄暗い部屋の中。 聞こえるのは自分の呼吸の音と。 手を動かすとぶつかり合う金属音。 がっちりと鎖で拘束され合った両手首は、更に椅子の背に括りつけてある。 足首は椅子の足に。 腹部分は椅子の背に。 こうもガチガチに拘束されていては、椅子から立ち上がる事など出来るはずもない。 ましてや…。 俺は視線を落とし自分の体を眺めた。 「はぁ…」 思わず深いため息が出る。 …何故俺は下着さえ付けず全裸で椅子に座っているのか。 この部屋は俺と遊里の寝室だったはずだ。 何故遊里がいない? 俺がこんな状態だという事は遊里も…? 落ち着け。 よく考えるんだ。 最近何か変わった事はなかったか? そうだ。 たくさんあったはずだ。 遊里とケンカをしたな。 派手なケンカだ。 しかもついさっきじゃなかったか? …いや、あれは夕食の後だったか? 違う、もっと遡って考えるんだ。 …そうだ。 俺と遊里がギクシャクし始めたのは――。 二週間前。 あの二人が来てからだ。 メイドの茜。 庭師の拓海。 あの二人が来てから――――。
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