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体が固まる。
後ろに居るのが誰かなんて分かってる。
パッと腕が離され自由になったのに、私は振り返る事ができず立ち尽くした。
「旦那様…あのっ…これは…」
拓海君が慌てて声を出すのに、私の頭の中は真っ白。
何が起きたのかも分からないし、それをどう説明したら良いかも思い浮かばない。
「言い訳は良い。…遊里、来なさい。」
海斗の低い声が怒りで満ちている。
だけど、私だって怒っているのだ。
「…やだ。」
「………何?」
「私がどれだけ傷ついたか分かる!?…それに多分拓海君は私を慰めようとしてくれただけ!!…私も拓海君も何も悪くないもん!!」
振り返らないまま、走り出す。
「遊里!!」
後ろから聞こえる声を振り切って、子供部屋に逃げ込んだ。
鍵をかけ、ドアにもたれかかる。
なによ…海斗のアホ…。
涙がポロポロ零れ、私はそのまま泣き疲れて眠ってしまった。
……翌日から待ち受けている、残酷な毎日など…想像すらせずに――――
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