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遊里が抱きしめられているのを見た時。
俺の頭の中で血が沸き立った。
言い訳すらしなかった遊里にも。
そして拓海にも腹が立った。
冷静に考えれば分かる事だったのに。
メイドも庭師も、送られてきた履歴書ではベテランの二人だった。
写真だって違いすぎる。
だが、そこに何か予感を感じていたのに、俺は都合の良いように解釈したのだ。
メイドと庭師を紹介してくれた会社で、何かわけがあって違う者をよこしたのだと…。
悪い予感を感じつつ、それを野放しにした。
……それが俺の最初の過ちだ。
ジャラ…。
重たい鎖を引きちぎろうと、必死に腕をひねる。
しかしそうすればする程。
腕に激痛が走った。
生暖かい感触が腕を伝い、それが血だと分かる。
「くそっ…」
腕の力を緩め、俺はまた考えを巡らせた。
第二の過ちは…視線を感じていたのに、遊里を抱こうとした事。
遊里に言った事は本心ではない。
視線の主の正体に気づいていたからこそ、見せつけてやりたかったのだ。
……お前の付け入る隙はない、と。
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