触れられない距離

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視線の主。 それは他でもない、拓海だった。 カーテンのわずかな隙間から覗いていた目は確かにあいつのものだったのだ。 遊里の話しを聞いているだけで、拓海が遊里に好意を寄せている事は分かっていた。 だから…。 しかし…そのまま俺は反省もせずに第三の過ちを犯したのだ。 「……」 ガチャ…。 リビングのドアが開き、遊里が俯いたまま入ってくる。 既に並べられた朝食を前に、俺は優雅にコーヒーを飲んでいた。 挨拶すらなく椅子に座った遊里にますます腹が立つ。 理由はどうあれ、他の男に抱きしめさせたんだ。 …一言謝罪くらいあっても…。 そう思いながら見ると、たまたま前を向いた遊里とバッチリ目が合ってしまう。 だが、それはすぐに反らされた。 なっ…!? なんだあの態度は!! ……まぁ良い。 少し俺の気持ちが分かるようにと、策は練ったのだから。 気持ちを落ち着け、俺は片手を上げた。 「茜。肩を揉んでくれないか?」 俺の脇に立っていた茜がすかさず俺の背後に回る。 「はい。かしこまりました旦那様。」 俺の肩に触れる茜を、遊里が目を丸くしてみていた。
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