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…本当は、遊里以外の女に体を触らせる事すら嫌だ。
遊里もそれは知っているから、余計に驚いているのだろう。
「茜、今日からお前は俺付きのメイドにする。頼むぞ。」
追い討ちをかけるよう言うと、遊里の顔が曇った。
「光栄です旦那様。精一杯勤めさせて頂きます。」
ガタンッ!!
茜がにこやかに頭を下げた瞬間。
遊里が勢いよく椅子から立ち上がる。
「奥様?」
大平が慌てて駆け寄ると、遊里は満面の笑みで言い放った。
「…ここは空気が悪いわ。部屋で食べたいので、昔の私の部屋に運んでくれますか?」
「は…はい、かしこまりました…。」
空気が悪い?
なんなんだあの態度は。
全く嫉妬すらしていないように見える。
俺はあの現場を見た時、嫉妬に胸が焼けそうだったというのに。
足早にリビングを出て行く遊里を見ながら、俺は深いため息をついた。
「…旦那様?」
茜が心配そうに覗き込んでくる。
「近寄るな。」
「…え?」
「俺が呼んだ時以外、俺に近寄るな!」
苛立ちをぶつけるように怒鳴った俺に、茜は一瞬眉を寄せた。
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