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翌朝。
朝食の時間になっても遊里はリビングに現れなかった。
イライラが募り、ため息ばかりが出る。
なんなんだ…。
昨日は帰宅したのに迎えにもこないし、夕食にも顔を出さなかった。
そして夜も寝室に戻ってこなかったし…。
俺の策が裏目に出たという事なのか?
それにしたって、俺がそこまで悪い事をしたとは思えない。
きちんと話し合えば分かり合える事なのだ。
なのに、遊里は…。
『奥様は、旦那様の顔も見たくないからと…部屋に閉じこもっております。』
昨夜帰宅した時の茜の言葉が頭の中で響く。
顔も見たくない?
これでは話し合う事すら出来ない。
…すぐに仲直り出来ると思っていたのに…。
何かの歯車が狂ったかのように、俺達はすれ違っているのだ。
…遊里…まさか本当に拓海と…。
いや、まさかな…。
頭に浮かんだ悪い考えを振り払うように首を振る。
「旦那様…?どこか体の具合でも…?」
そんな俺の顔を茜が覗き込んできた。
朝食を食べない俺を心配しているらしい。
「いや、なんでもない。」
「でも…とりあえずお熱を…」
そう言って茜が前屈みになった瞬間。
ズルッ!
「きゃあ!!」
「っ!?」
茜が足を滑らせ、俺の方へ倒れ込んできた。
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