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ガチャ!!
その時、まったく良いタイミングで、リビングのドアが開けられた。
「!?」
入ってきたのは遊里で、俺を見た瞬間に目を丸くする。
その瞳には悲しみが濃くうつされていた。
それもそうだろう。
俺の唇に当たる、柔らかい感触。
間近に迫る茜の顔。
確かに触れ合っている唇に、俺は身動きすら出来なかった。
「海…斗…?」
震える声で名前を呼ばれ、やっと我に返る。
茜の体を乱暴に引き剥がし、遊里を見た。
これは違う。
事故だ。
そう言いたいのに口が動かない。
あまりに突然の事に、この俺が動揺しているのだ。
「…っ!!」
「遊里!!!」
踵を返して走り出した遊里。
追いかけようとした途端、俺のワイシャツが引っ張られた。
「っ…?なんだ?」
ワイシャツを強く掴んでいる茜に苛立ちの目を向ける。
「あのっ…私すみませんでした!!」
泣きそうになりながら頭を下げる茜。
だが…。
「そんな事はどうでも良い!!離せ!!」
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