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海斗は少し黙った後、浴室のドアを閉め中に入ってきた。
「遊里。…俺達は互いに話し合いが必要じゃないか?」
そう話す声は先程とは違い優しく響く。
「そうね…」
小さく頷いた私に、海斗は安堵したように息を吐いた。
「…そろそろこっちを向かないか遊里。しばらく顔を見ていない。」
そっと海斗を見上げ、途端に涙が溢れる。
海斗は私の顔を見つめた後、濡れたままの私の体を抱き寄せた。
「っ…海斗っ、濡れちゃ…」
「いい。…それどころじゃないんだ。」
「……うん。」
体温を確かめ合うように、私も海斗の背中へと腕を伸ばす。
海斗の腕。
逞しい胸や、この鼓動。
声も匂いも…全てが懐かしい。
たった二週間なのに、地獄のように長く感じた。
だけど今私達はこうして抱きしめ合っているのだ。
…もっと早く、恐れないでこうしていれば良かった…。
コンコン。
ビクッ!!
浴室のドアがノックされ、私の肩が跳ね上がる。
「奥様、タオル、こちらに置いておきますね。」
「あ…拓海君ありがとう。」
拓海君の声に反応したのか、海斗が怪訝そうに眉を寄せた。
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