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ああそうか…。
やっと、思い出した。
そうだ。
ほんの何時間か前には、俺は遊里と一緒に浴室にいた。
遊里を先に部屋へ帰した後…急に頭が重くなって。
そこから先の記憶がない。
「夕食に薬を盛られたか…」
呟いた瞬間、誰かがドアを開けて入ってきた。
「ご名答。微量の睡眠薬。…遊里がいないと眠れないあんたに、ほんのプレゼントのつもりだったんだけどね。」
暗くて顔こそ見えないが、俺にはこれが誰か分かっている。
「茜、お前は何が目的なんだ?」
クスクスと笑う茜はゆっくりとこちらへ歩いてきた。
手を伸ばせば届きそうな位置までくると、俺の耳に唇をつける。
「玉の輿、狙ってるのよ私。」
「…それは他をあたるしかないな。私には叶えてやれない。」
きっぱりと言い切った俺に茜が舌打ちをした。
「私に振り向かない男なんかいないのよ?散々アプローチしたのに遊里遊里って…それでもどんどん仲違いしていったから安心して今日こそ既成事実を…って思ってたのに。仲直りなんかしようとしたから計画変更よ。…力ずくで私を選んでもらうわ。」
言ったかと思えば。
茜はバサバサと身に付けていた服を床に投げ捨て始めた。
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