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「なんなのよ!!イチャイチャしてんじゃ…!?」
怒鳴った茜が目を丸くして固まる。
それもそうだろう。
俺は持てる全ての力を出し、腕の鎖を無理やりに解こうとしていた。
「何…やってんのよ!…血が…。」
青ざめた茜の言葉すら耳に入ってこない。
ギギ…
鈍い音をたてている鎖は容赦なく俺の腕に食い込みえぐっていった。
痛みなど感じない。
今俺の前で他の男に抱かれそうになっている遊里の痛みに比べれば、こんな痛みゴミのようなものだ。
「海斗っ…やめて!!」
悲痛な遊里の声を聞いた瞬間。
ガキンッ!!!!
金属音と共に、腕を縛り付けていた鎖が床に散らばった。
「うそ…だろ…」
拓海が譫言のように呟くのが聞こえる。
「…嘘だったら良かったか?」
言いながら、体を締め付けていた他の鎖を外した。
腕さえ外してしまえば、あとは鎖をずらせば勝手に外れてくれる。
…まあ、きつく縛られていたから傷はついたが。
血まみれになった腕も気にせず、俺は椅子から立ち上がる。
茜はもう、動けないようだった。
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