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「…あれだけ威勢の良い事を言っておいて…情けないなぁ茜。」
低く出された声に茜の肩がびくつく。
静かに後ろに下げられた足を見て、俺は茜の腕を掴んだ。
「逃げるのか?…お前がしでかした事だろう?最後まで見届けろ。」
少し睨みつけただけなのだが、茜はそのまま腰を抜かしたように床にへたり込む。
振り返ると、遊里の足を掴んだまま固まる拓海と目が合った。
「…いつまで触っている?」
「あ…や…」
上擦った声で言った拓海は、慌ててベッドから飛び降りる。
「お前も茜の隣に座りなさい。」
有無を言わさぬ地に響く声に拓海が素直に従った。
「遊里…」
それを見届け、遊里に駆け寄る。
遊里の鎖を外すと、少し血の滲んだ腕で俺を抱きしめた。
「海斗っ…海斗ぉ…」
「…怖かったな。もう大丈夫だ…」
その震える細い体を抱きしめ返し、そのまま二人を見下ろす。
「…なんで…そんな女の為にそこまで…」
茜が無意識に言った言葉に苦笑した。
「それが愛だからだろう。」
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