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「有名会社の社長のメイドと庭師…こんなおいしい話しはない。…採用した人間じゃないと気づかれても文句を言われないよう、私達は必死に仕事を勉強してここにきたの。…そして、妻の座を奪って…やっと私達は幸せに暮らせるはずだったのに…。」
俯いてしまった茜さんを、拓海君が優しく支える。
「…それは、本物の幸せなのか?」
それまで黙っていた海斗が、呆れたように言い放った。
茜さんも拓海君も当たり前だろうとでも言いたげに眉を寄せる。
「愛のない、利益だけを求める略奪や結婚が、本物の幸せだとは私は思わない。全ての幸せは愛あってこそだ。…なぁ遊里?」
優しい瞳で私を見つめる海斗に、深く頷いた。
「…あなた達は今まで辛い思いをしてきたんだもの。きちんと幸せになる権利があるはずよ。だからまず…茜さん、あなたが近くにある深い愛に気づかなくちゃ。」
「え…?」
驚いていた茜さんは、私の視線を追って顔を上げる。
その先にあったのは…もちろん、彼女を深く愛してくれている彼の優しい笑顔だった。
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