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「何考えてるんだ?」
逃げるようにコソコソと逃げ出した屋敷からのタクシーの中。
拓海が私の顔を覗き込んだ。
「…悲しい顔で、ずっと考え事してるだろ?」
「…多分拓海と同じ事、考えてる。」
小さな声で答えると、拓海が苦笑する。
「…なんか、見入っちゃったよな…」
コクンと頷く。
目が離せなかった。
二人が互いの名前を呼び合う度体が熱くなった。
旦那様の愛撫も、目も、全てが違った。
…今まで私が体を売ってきた男達とは、全てが。
愛というカタチのないものがそこに確かにカタチを成していたのだ。
愛している。
そう、二人の体が訴えてた。
「…俺達が今までしてきたSEXって、何だったんだろうな。」
少し悲しそうに拓海が呟く。
拓海も私も、お金目的でしかSEXをした事がない。
愛なんて存在しないと確信していたからだ。
自分達を捨てた親。
今まで生きてきた中で、愛の存在に希望を持たせる出来事など1つもなかった。
だけど…
「…あの二人は、本当に愛し合ってるんだね。」
「…ああ。」
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