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それっきり拓海は何も話さなかった。
だけど、長い沈黙は嫌ではなかった。
拓海もきっと私と同じ事を考えてる。
そう分かっていたから。
狭いボロアパートに着き、部屋を見渡す。
「…落ち着くね。」
微笑むと、拓海が優しい笑みをくれた。
ずっと気になっていた事を聞いてみる。
「私の事、好きだったの?」
「ああ。」
「いつから?」
「……ずっと前から。」
そう言った拓海は幸せそうに目を細めた。
…なんだ。
「私達、両想いだったんだね。」
言った瞬間拓海の目が見開かれる。
「え………?」
「自分だって鈍感じゃない。」
クスクス笑いながら、言い逃げして浴室に駆け込んだ。
「え?え?ええぇ!?」
拓海のおっきな声がここまで聞こえてくる。
こらえきれず、声をあげて笑った。
……互いに愛を信じてなかったから、この関係を壊したくなくて気持ちを押し殺してたんだな…。
そう考えたら全てのつじつまが合う。
時折感じた拓海の暖かい眼差し。
私を守るように…自分ばっかりたくさん仕事して、私の仕事を減らしてくれてた。
…こんなに深い愛に守られていたのに、気づかなかったなんて。
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