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「とにかく、私が言いたいのはですね」
遥香は一歩踏み出し、「桐野さんの心配をするより、自分が一体何をやるべきなのかを考えた方がよっぽど良いと思いますよ」
そう言って優しく笑った。
確かに、遥香の言っている事は正しいな。
俺まで思い悩んでいては、いつまで経っても埒(ラチ)が明かない。
俺は、今俺が出来る事を考えないとな。
「城哉君、こんな簡単な事にも気づけなかったんですか?」
「まぁな。でも、お前のお陰で気づけたよ」
「感謝してくださいよ?」
「ちゃんとしてるよ」
その言葉で上機嫌となった遥香は鼻歌を歌い、スキップを始める。
そう考えてみると、これだけの事で喜ぶ遥香は桐野より単純な奴なのかもしれないな。
「ところで、今夜の夕食は何にしましょうか?」
「う~ん、そうだな・・・とりあえず肉がいいな」
「ほんと、いつまで経っても城哉君は子供ですね」
「うるせぇ!ほっとけ」
そんな会話を続けながら夕暮れの道を二人で歩く。
俺が桐野にしてあげれる事、そんな事はもう既に決まっていた。
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