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「でも、もういいんだ」
桐野らしくない、諦めの言葉だった。
「何で遠慮すんだよ」
俺は桐野に問い返す。
すると、桐野はまるで遠くの物を見る様な目で俺を見ながら、
「どうせ人数が足りないから」と吐き捨てる様に言った。
「人数?」
「そう。もし、私と神崎君がいても部活を結成するには残り二人は最低でも必要なのさ」
「二人・・・・・・ねぇ」
たった二人と思われるが、この時期にはほとんどの生徒が何らかの部活に所属している。
帰宅部であっても、北谷や安田の様に夏から塾やバイトを始めて部活に入れない者もいる。
よって、たった二人と言っても集めるのは多少困難なのだ。
それでも、ここで諦める訳にはいかない!
「分かった。俺もメンバーの勧誘手伝うよ」
「えっ!いいの?」
「あぁ、絶対集まるか分からないがな」
「うん・・・・・・ありがとね」
桐野は俺に満面の笑みを見せてくれた。
偽りの笑みではなく、本当の笑みを。
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