天月 梨音

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「んー…まぁ仕方ないよねー? 次があるさぁ」 「……先輩は次がありすぎるんですよ」 年下のくせに生意気な発言だ。でも先輩はそんなこと気にしないのはわかっている。 先輩に悪い噂がたたないのは、きっと温和で友好的な性格とぽわーんとした雰囲気、加えて見るからに純真無垢な笑顔を振りまいているからなのだろう。 実際先輩は彼氏と長続きしないことにも来るもの拒まずなことにも全く悪気はない。 ……何というか…不思議な人だ。 そして何故か必要以上に僕に絡んでくる。 普通なら彼氏がいるのなら他の男との関わりも気を使うのだろうが……さすがは先輩全く気にしない。 「ねーねー一緒に帰ろうよー」 「遠慮しときます。彼氏と帰ればいいじゃないですか」 「えー?……ケチー!」 いや、ケチとかそういう問題ではないと思う。 僕は何か懐かれるようなことをしただろうか?全く身に覚えがない。 でも先輩は下心があって近づいてくるわけではないから特別拒絶したりはしない。(もう勝手にしてください状態) 「駅前にクレープ屋さんがあるの知ってるー? ねぇ一緒に行こうよ!」 「彼氏と行ってください」 「……ん、じゃあ彼氏とは明日行くよ! ってなわけで今日は優人君と行くの!!」 だからそういう問題ではない。 全くこの人はうざったい。本当にうざったい。 「ね?一緒に行こ?ね?ね?ね?」 「しつこいです。 ……まあ、別にいいですけど」 「本当!?やったああ!」 ……こんなにうざったいのに、でも憎めない。 先輩には不思議な魅力があるのかもしれない。 そんな不思議な先輩と 平凡男子高校生な僕の ありふれた、平凡な物語。 .
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