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なんやかんやとそのあとも会話ははずみ、7時にスタートした彩との飲み会も、店を出る頃には11時をまわっていた。
うーん、今日も結局飲み過ぎた気がする。
ビールってなんであんなに美味しいのかしら。
平日だからか、まばらな人混みの繁華街を駅へと歩きだすと冷たい風が頬をかすめた。
吐き出した息がふわりと白く消えていく。
「春とはいえど、やっぱ北の地は寒いわぁ~。」
「雪溶けただけでも大分マシよ。自転車乗れるしもう滑って転ぶ心配ないし。」
たしかに、と彩は2、3度頭を縦に振ったあと、思い出したようにこちらに振りむいた。
「そうだ、大事なこと忘れてた!」
「な、なによ?さっきのバイトの話なら今日は返事だせないわよ?」
「う、まぁそれはわかったけど、時給のこと話してなかったよね?」
あぁ、たしかに。
学生のバイトといえば職種と時給は大切な二大柱よね。
けれど私時給なんかにはひかれないわよ?
だいたい一人家庭教師したところでたいした稼ぎにはならないと思うし。
心でそんなことを思いながら彩の言葉を待つ。
特に期待はしない。
…それなのに。
「一応親御さんは時給5000円でどうかっていってるんだけど。」
「…え、まじ?」
呆気なく揺らいだ。
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