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2000年春。
桜が咲いていた。
死にたいと思っていた。
消えたいとさえ思っていた。
存在をなかった事にしてほしい。
耳に残る声。
誰かが言っていた。
「イナケレバヨカッタノニ。」
それは誰だったか?
それは俺が母と呼んだ人だった。
それは俺の実の父親ではなかったか。
そして、解っていた。
そんな風に思ってしまう自分がとても浅はかで、脆弱だということも。
ハッと飛び起きた祐希の体は汗ばみ喉はひりひりと渇いていた。
「いつの間にか寝てたのか…。」
僅かに零れたカーテンからの日差しを少し疎ましく思いながら、祐希は体を起こす。
フローリングの床に身を預けていたらしく、目覚めたばかりの祐希の体は重くけだるかった。
また思い出してしまった。
あの人の事を。
あの時の事を。
忘れたいのに。
カーテンに手を伸ばすと祐希は少しカーテンを開いた。
ふと、時計を見ると午後1時を過ぎたあたりだった。
少し雲っていたが、雲間からの眩しい光を見ると、底冷えのするこの部屋より外の方が暖かそうだった。
「外行こうかな。」
スウェットにジーパンという簡単な格好に上着を一枚羽織り、ジーパンのポケットにタバコと携帯、それから机の上に無造作に置かれた千円札を突っ込むと履き慣れたスニーカーのかかとを踏んで、古びたアパートの扉をあけた。
外は思ったより肌寒かった。
身震いして、自転車にまたがり近所のコンビニへ向かう。
今日は毎週買う週刊ジャンプの発売日だ。
「まだ、少し楽しみがあるだけいいか?」
誰に問うでもなくつぶやいた言葉は行き交う車のエンジン音にかき消された。
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