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「……今日御呼び立てしたのは他でも無く、アナタを一目見たときに運命を感じたからなのです」
喫茶店の、1番奥まった席に座った僕の対面で流暢に喋る彼女は、同じ学校の三神さん。
美人局(つつもたせ)かと思いましたが、どうやら違うみたいです。
「私達はきっと、来世で必ず結ばれようと契り合った仲なのです。そうでなければ、私の御霊が感動に打ち震えるなど決して有り得ません!」
「さいですか……」
美人局よりもたちの悪い、電波ちゃんでした。
「失礼、つい取り乱してしまい……」
彼女は浮いた腰を降ろすと、先程運ばれてきたオレンジペコを一口すする。
僕もそれに倣ってアールグレイをすすった。
「で、僕達の前世って?」
尋ねると、両手で持ったカップを置き、コホンと咳ばらいをした。
「ロミオとジュリエットです」
「ぶほっ!」
「だ、大丈夫ですか中村様!……私、間違っちゃったかなぁ」
アールグレイを吹き出した僕の口許とテーブルを持参のハンカチで拭いてくれる彼女に感謝しつつ、気管に入った水分を吐き出す為の生理現象を抑えるのに必死になった。
「……光源氏とそのお母様の方が……うーん」
その間、三神さんはずっとわけのわからないことを――あぁ、成る程。
「三神さんってさ……実は、電波じゃないでしょ?」
臆すること無く、僕は言い放った。
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