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「ま、じょ…やしき?」
確かに魔女は住んでいるけど。
「ああ、でも君の家なんだった。すまない」
少年はかくりと頭を下げた。
僕は急に申し訳無い気持ちになって、首を横に振った。
「頭なんか下げなくていいよ!確かに魔女は住んでるから!」
「え」
少年は目を見開き、小さく声を漏らしながら僕に視線を送る。
今まで虚ろだった瞳が、急に光を取り戻す。
「本当に?」
「う、うん」
あからさまに驚かれて、魔女は特異な存在であることを知った。
今まで気が付けば隣にいたから。
僕の世話をしてくれる、とても優しい魔女。
普段は全く家に寄り付かないのだけど、魔女に会いたいと思えば来てくれる。
「すごい」
少年は目を細めて、口を逆三日月型にして笑った。
そのとき初めて、人の笑顔を見たのだった。
魔女は笑わなかった。微笑むだけ。
僕もなんだか嬉しくなって、笑っていた。
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