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今まで寄り付きもしなかった。
魔女の言うことは絶対だったから。
綺麗な木の目の模様に、小さな覗き穴が付いた扉。
所々に抽象的な模様が金で施されている。
触ったこともないノブ。
何故か震える指先が、冷たいドアノブに触れた。
少しだけ力を掛けて右に回す。
これで開くはずなのに音をたてたけれど開かない。
(えっ…なん、で…?)
もう一度、今度は力を掛けて何度も何度も回す。扉を無理矢理押すようにしながら。
けれどがたがたと音をたてるだけで開かない。
(何で……!?)
背筋がひやりとした。
目の焦点は合わなくて視点が定まらない。
それが嫌でうつむくと、金色の丸いドアノブの下には、出っ張りがあった。
それを見た瞬間、閃いた。
(これ…鍵、だよね…?)
本でしか読んだことが無いのだ。
生まれてから今まで、会話は魔女としかしたことがない。
その魔女も遊び歩いていて滅多にお屋敷に戻らない。
僕はお屋敷から出たことがない。
だからドアに触れたのは初めてだった。
恐る恐る手首を捻って鍵を回すと、ぷちん、と糸が切れる様な音がした。
よくわからないけれど、これで開く。外に出れるんだ。
思いきってドアを開けた。
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