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さわ、と柔らかくて冷たい透明な何かが頬を撫でた。
(これが…風…?)
一歩踏み出すと、靴の裏に初めての感触。
夏に食べるシャーベットを踏んだらこんな感じかな、という様なさくさくした白いもの。
舞い散る紙吹雪。
(これが……雪?)
お屋敷から一歩外に出ると、着ていたものが瞬時に変わる。
ふかふかとしたファーつきのコート。
ふかふかのスリッパだった筈なのに白いブーツ。
日毎に着替えなくても勝手に変わっていた服なので、大して驚きもしなかったけれど。
僕はとにかくはしゃいだ。
雪に足跡がつくことを知らなかった。
今はわかる。
冷たい風が針を刺すみたいな痛みを生むだなんて知らなかった。
今はわかる。
僕は夢中で走り回った。
楽しくて楽しくてしょうがなかった。
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