警告

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気がつけば、水を選んで浴びせかけていた。 不思議と、自然に水を選んでいた。 他にアイスコーヒーとオレンジジュースという選択肢もあったのに。 テーブルの上のグラスを選ぶ際、妙に冷静な気持ちでアイスコーヒーとオレンジジュースはきっと染みになるから却下していた。 悔しいくらい、憎らしく思ったのに。 赤い髪から水を滴らせながらスザクは、これでいいんだよ、とでも言いたげに微かに微笑んだ。 公衆の面前で水を浴びせかけた私を少しも非難せず、むしろ受け止めようとしているかのようだった。 彼の隣に座る、先ほどまで彼と熱烈なキスシーンを繰り広げた黒髪の色男は、気だるげにそっぽを向いて煙草の煙を吐き出した。 あぁ、慣れてるんだな。 こういうの。 その動作のおかげで瞬時に悟ることが出来た。 そして、私の愛した男が酷く不埒で酷く優しい人だったということも。 出会ったのは、一年前の夏だった。
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