警告

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世の恋人たちは、サプライズを用意しては楽しむらしい。 その日私は、凍える手を擦り合わせながらザクロの大学の前で待ち伏せしていた。 30分後に駅で待ち合わせているが、大学前で待ち伏せして驚かせてやろうと思ったのだ。 ていうか、あんな赤い髪の不真面目そうな人が、こんなに頭の良い大学に通っているとは…。 そこは、私大の中では一位二位を争うような偏差値の高い大学だった。 二流大学の私と、よく付き合う気になったな。 「スザクー」 猫撫で声での叫び。 こんなに頭の良い大学にも盛りのついた女の子はいるのか。 興味本位で中を覗き見ると、声の持ち主であろう女の子がしがみついているのはザクロだった。 自然な様子で腕を組み、まるで恋人同士のように歩いている。 ていうか、スザクって誰? 呆然と立ち尽くしていると、私に気づいたのかこちらを向いたザクロの目がみるみる丸く見開かれていく。 逃げ出そう。 そう思う前に足が動き出していた。 「スズ!!」 後ろからザクロの声が追いかけてくる。 だけどそれすら煩わしかった。
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