バイオリンの申し子

11/15
前へ
/23ページ
次へ
──五歳の頃からデビューして十四年になりますが、今でも舞台に立って緊張しますか? 「緊張がなければ良い演奏は出来ませんよ。 ……とか、プロらしいことを僕は言いません。 子どもの頃は緊張で足が震えていましたが、今では緊張なんてあまり感じません。 むしろ緊張なんて支障をきたすだけですよ」 そこらのプロの発言を馬鹿にするような口振りだが、彼の言うことには説得力があった。 ──開演まで時間が少ししかないね。 次で最後にしましょう。 「もう良いんですか?」 ───ダラダラと意味ない質問はしないタチでね。 「……そういうキッパリとしたポリシーは昔と変わらないですね」 ……照れるじゃないか。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加