バイオリンの申し子

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この世界には天才という者は確かに存在して、その類い希なる才能で他者を圧倒するのだ。 化け物と呼ばれることもあれば、私の目の前にいる少年のようにスーパースターになることもある。 他者はその才能に嫉妬し、憎み、羨む。 だが当人達はそんな些細なことなど気にしていない。 彼等はいつだって高みを目指しているのだ。 「バイオリンは自由自在に音を変えてくれる楽器で、僕の技術を惜しみなく発揮してくれる唯一の武器なんですよ」 目の前の少年は言うのだった。 舞台に立つことを当たり前にして、聴衆なんて二の次で、四六時中高みを目指している。 舞台に立つことさえ許されない人達は数多くいるが、彼はそんなこと気にしたこともないのだろう。
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