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「舞台に立って、スポットライトを浴びたその時に、世界は僕だけの物になったような気がするんだ」
少年の言葉を聞き流しながら、科学技術の躍進によって高性能化された録音装置を机に置き、メモ帳とペンを持って、これで私の武器は揃った。
臨戦態勢に入る。
「あれ、ライターとしては珍しく鉛筆を使うんだね」
──時代についていけないだけだよ。
シャープペンシルという物は、何だか書いた気分にならなくってね。
「分かりますよ、その気持ち。
楽器というのも、やはり古いものの方が僕も好きだからね。
開拓、革命、戦争。
歴史の重みというものを、手に持って実感するよ」
どうやら自分の世界に入り込んでしまったらしい。
こうなった少年が元の世界に戻るには少し時間がかかる。
私は自前のお茶を飲んで喉の渇きを癒やした。
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